第9夜「にんじん ジュール・ルナール」

小学校の頃、母が、「にんじん物語」を買ってきた。子供用に書かれていたが、僕は、にんじんの母親に対して衝撃を受けた。世の中に、自分の子供をいじめる母親がいるとは想像もできなかった。読み進める間も、本当はいい母親で子供の為に敢えて悪い母親を演じている。なんてオチを期待して読んだものだが、そこには救いがなかった。そんな本を母が飼ってきた理由もわからない。

次に何を読もうかと青山ブックセンターを歩いて、懐かしいタイトルに手を伸ばした。そして、子供用でなく原作なら、どこかしら救いがあるかも?と思った。

『にんじん。髪の毛が赤くてそばかすだらけのルピック家の三番目の男の子はみんなからそう呼ばれている。あだ名をつけたのはお母さんだ。お母さんには、にんじんに夜の暗闇のなかをにわとり小屋の扉を閉めに行かせたり。おもらししたおしっこを朝食のスープに混ぜて飲ませたりする。だが、にんじんは母親の意地悪にも負けず成長してゆく。』(新潮文庫)

悲しいことに原作を読んでも救いはなかった。子供の頃は気づかないが、世の中に実は児童虐待はあふれている。信じられなかった母親像が、そこかしこにあることに気づく。悲しい話であるが、それでも今も児童書にするのはどうかしらと思うものである。

 

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