第3夜「小島直記伝記文学全集1巻」

「遠い母」「ヨーロッパ旧婚旅行」「花よりワイン」

小島直記先生(1919年 5月1日 – 2008年 9月14日)は僕の恩師である。全集1巻のあとがきを読むと1986年9月とある。僕が小島先生の講座に参加し始めた時期なので、全集の配本とともに、先生に育てていただいたのだと感じている。

第1巻は、「遠い母」「ヨーロッパ旧婚旅行」「花よりワイン」の三作が収められているが、この1巻だけは他の14巻とは異質なものだ。というのも、この3作は、小島先生の自分語りと言える作品で、伝記作家がいわば自分の伝記を書いたともいえる。もちろん当時も読んでいたが、改めて読み直すと、先生の息遣いが感じられて嬉しい。伝記を通じての授業であったが、合間合間に先生の過去の思い出をしっかり聞かせて頂いた。旧制福岡高等学校での話、大学進学時の悩み、海軍での話等々である。また、最近行かれたヨーロッパ旅行での話もたくさん聞いた。そうしたことが、いっぱい詰まっているのがこの1巻である。

読みながら先生のことが懐かしくてたまらない。何度読んでもいいものと感じた。

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