第23夜「日本近代短篇小説選 明治篇1」の「わかれ道 樋口一葉」を読んで、そういえば、「たけくらべ」「にごりえ」は読んでたのかしらと思い新潮文庫「にごりえ・たけくらべ」を買った。「にごりえ」だけは、「当世書生気質」の前に読んでいたので、先に「十三夜」を読む。短い話ではあるものの始めから濃厚で読み応えのある話である、後半は一転して切なくとも、日本的で美しい話。十三夜の月に照らされた幻想的で味わい深い。古書を古読せずというが、テーマ自体は今でも通じるような気がする。また、旧暦8月15日の十五夜から約1月後の十三夜も月見の風習があるのを知った。晩秋から冬へ向かう季節の月。そう思うと作品がさらに浮かび上がる。蛇足ながら、最後の別れのシーンは「シュルブールの雨傘」を思い出した。
樋口一葉は貧困であり、結核のため若くして亡くなったのが残念であるが、私のようなものが長生きして、冷房のかかる部屋で、しかも370円でこんな素晴らしい作品を読んでいることに対して、本当に本当に樋口一葉に対して申し訳ない気持ちになる。
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