第44夜「一足お先に」夢野久作

久しぶりに面白い作品に出合った。夢野久作氏の作品は全体的に好きなのだが、ぐっと引き付けられた。角川文庫の瓶詰の地獄の中の短編作品の中で一番だろう。

いろいろ考察をしたいところである。ネットで感想をいろいろ探したが他の作品と違って考察はあまり出てこない。単純に交錯した世界観を楽しみにした方がいいということかも。

ちなみに私の解釈は、標本室に行ったところまでは現実で、あとは午前4時ごろ起きて殺人事件の騒がしい状況を寝ぼけていて感じていた。2度寝して自分が犯人ではないかという夢を見て夢の中で副院長に責められる。明け方起きて、現実の殺人事件の様子を聞いた。

それにしてもなぜ院長が出てこなかったのかが気がかりであった。逆に言うと副院長とする必要性があったのか?

★★★★★

 

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第43夜「瓶詰の地獄」夢野久作

夢野久作のビール会社征伐がおもしろくて、夢野久作の作品を改めて読んでみようかと思った。今回は角川文庫の「瓶詰の地獄」を購入。瓶詰の地獄は、以前かつしかFMで「深川芹亜のradioclub.jp」を放送していた時、深川さんがおはなし千一夜として一部朗読したことがあるので、全文を読んでみたいと思っていたので楽しみにしていたものです。

https://www.nicovideo.jp/watch/so33858087

今読んでみると、そこまで真剣に考えなくともと思ったりする。

★★★

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第42夜「黒猫」エドガーアランポー

おはなし千一夜で声優の勝野里奈さんに朗読をしてもらった作品。はじめ黒猫 江戸川乱歩とばかり思っていて、原稿を打ち出して、間違いに気付いた。調べるとエドガーアランポーの代表作とのこと。教養のなさが出てしまった。中高生の課題図書になったりもしているようで、知らないということが恥ずかしくもある。

内容は、ひたすら鬱展開。やっぱり一度読んだらもう2度とは読みたくないようないやーな感じのする作品。それでもエドガーランポ―の代表作と言われるのには納得した。

★★★★

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第41夜『別れが」が愉し』山川方夫

ドラマや映画のワンシーンを日常生活に取り入れることは若いころしばしばしていた。小説の一節をそらんじて、友人がその出典を指摘するなども。ちょっと楽しい知的遊びのようなものだった。それで、私は、本を読んでは使えそうなフレーズを暗記してみたりもしていた。そういうことを思い出した。実は、庄司薫の作品にも同じようなことをしていることが書いてあったと思う。

恐らく、程度の差はあれ、山川方夫氏も同様だったのだろう。そこから話を広げていったのが本作。まあうまく作れていると感じた。

★★★★

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第40夜「ビール会社征伐 夢野久作」

夢野久作作品は、高校の頃2冊文庫本を読んだきりだった。過去におはなし千一夜で短い話を聴いていたが、今回の「ビール会社征伐」もとびきり面白い。

夢野久作氏は九州文学を主宰しておられたが、同じ九州文学と言えば恩師小島直記先生を思い出す。なんだか懐かしい思い出を感じつつ読んだ。

時代的背景から、なんとものんびりして、間の抜けたおはなしで、大好きな作品になった。

声優の西門志織(ピュアリーモンスター)さんの朗読もいい。

★★★★★

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第39夜「夏の葬列 山川方夫」

山川方夫を読みだした。「待っている女」「恐怖の正体」「博士の目」「赤い手帳」「蒐集」と読んでいき、当初思っていた山川方夫のイメージがだいぶ変わった。と、いうのは「夏の葬列」は中学2年3年の国語の教科書に掲載されているということからまじめな作品だけだと思っていたのだ。意外に性的なものも扱っているように思えた。

「夏の葬列」は戦争の影のようなもので、教科書中で鬱展開すると言われている作品でもある。結構厳しいものがあるが、戦争を離れてみても誰しも子供の頃や若いころの忘れたい思い出はたくさんあるのではないか?大人になるってことはそういう嫌な思い出が増えてそれでも生きていかなければならないものだと思ったこともある。

そして又思う。若いがゆえに、今なお心の傷になるのであって、さらに年を重ねるとその感性も鈍くなっていくものである。

★★★★★

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第38夜「十三年 山川方夫」

 

青空文庫より。

ラジクラでおはなし千一夜を始めて、その甲斐があったと思えたのは「山川方夫」を知ったことだ。声優の塙有咲さんが、「歪んだ窓」を朗読してはじめてその存在を知った。気になって、いくつか作品を読んでみた、「夏の葬列」「朝のヨット」「お守り」「トンボの死」を読んだ。ショートショートは星新一氏だけだと思っていたので、読んでみたい作家が出てきて嬉しくなった。そして、塙有咲さんの3回目のおはなし千一夜は「十三年」であった。

彼の作品は戦後が出てくる。出さなくてもいいのに宿命としてあえて出してきているようにも思える。

青空文庫には30作品が並んでいた。山川方夫氏が35才でなくなったと知って、残念な気持ちでいっぱいだ。

十三年 おはなし千一夜

★★★

歪んだ窓

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第37夜「うつせみ 樋口一葉」

あるところに越してきた雪子が精神を病んでいた話で、原因がだんだん明らかになってくる。許婚がありながら他者と相思相愛になり、恋愛相手が死亡したというもの。あまり、面白くなく、前回の「ゆき雲」の方がずっとよく思えるほど。

どうやら樋口一葉氏の作品の中で「うつせみ」は酷評されているのだとか。酷評されていれば、私はかえってどこかいいところを見つけたいと思い、書かれた背景を思った。樋口一葉氏の隣人をヒントに書いたという考察がされていた。また、奇跡の14か月の間に書かれた作品であるので、自分の命の短さを予感しており、書きたい「ネタ」をちりばめたのではないだろうか? 考えてみれば、樋口一葉の主人公になる女性は、貧乏や不自由な恋愛という現実に耐え忍ぶものが多い。それからすれば、経済的に恵まれ、自由恋愛に身を投じたという珍しい主人公でもある。結果は悲劇的で救われないものである。こういう結末まで、雪子は理解していたとまでは思えないが、悲劇となっても恋愛を通した女性を樋口一葉氏は描いてみたかったのではないかと思った。

 

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第36夜「ゆき雲 樋口一葉」

話自体は、単純なもので、私からはだから何?という内容。桂次のひとり相撲的な感じもし、勝手に話して勝手に消えていったというもの。他の作品と比べて軽量級な感じが否めない。桂次とお縫があらかじめ盛り上がっていたら感想は変わったかも。

ところで、解説には、作者と許婚との関係の実話をもとに作られたのでは?とあるので、真偽はわからないが、作者の経験から書いておこうと思ったものか?

★★

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第35夜「おおつごもり 樋口一葉」

おおつごもりの後味の悪さ。単純に考えれば、盗みがばれなくてよかったよかった。日頃の行いがいいので、クリスマスの奇跡ならぬおおつごもりの奇跡が起こった。と考えるかもしれない。しかし、まじめなお峯にとっては、告白をしなければ一生罪悪感にさいなまされることになる、石之助が、分かったうえでお峯をかばうことにしていたとしても、お峯の心は安らかにならないだろう。

読んでいて、坪内逍遥の「細君」で奉公していた娘が身投げしたことを思い出して、そして、樋口一葉氏の作品が毎度暗い結末に終わっていたので、お峯の死を予感していたが、こういう終わり方もあるんだと感心した。

そして、私は石之助がお峯をかばおうとしていた説の方を取っている。私も「後の事しりたや」である。

★★★★★

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第34夜「たけくらべ 樋口一葉」

ガラスの仮面に出てきていて、あらすじはなんとなく覚えていたが、いろいろ思い違いをしていたことに気づいた。子供から大人に変わっていく話は、よくテーマにされがちであるが、「たけくらべ」は一段、悲しいような、寂しいような、どうしようもない気持ちになってしまう。自分が子供から大人になっていく時を思い返してみるが、さすがに、登場人物のようなものではない。

時代時代において現実に直面する私は、無力さを感じるものだ。樋口一葉氏の作品は、私の中で十分消化できないものばかり、それが故気になって心に残るのかもしれない。現実を変える力が少しは今もあると思いたいのだが。

★★★★★

 

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第33夜「にごりえ 樋口一葉」

にごりえは、濁った水。どぶのことで、力が子供の頃お使いのお米を落としたのはどぶの中。子供のカステラを捨てたのもどぶに落ちた。華やかなものの裏側にはにごりえがある。

人の情というのはどうしようもない。ストップウォッチを見るように、すでに始めからこうなるようになっているかのように思われた。構造的貧乏や社会制度など、個人ではどうすることもない世界を感じる。読んでてつらい。

最後があまりにも悲劇すぎる。奇跡の14か月。

★★★★

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第32夜「十三夜 樋口一葉」

第23夜「日本近代短篇小説選 明治篇1」の「わかれ道 樋口一葉」を読んで、そういえば、「たけくらべ」「にごりえ」は読んでたのかしらと思い新潮文庫「にごりえ・たけくらべ」を買った。「にごりえ」だけは、「当世書生気質」の前に読んでいたので、先に「十三夜」を読む。短い話ではあるものの始めから濃厚で読み応えのある話である、後半は一転して切なくとも、日本的で美しい話。十三夜の月に照らされた幻想的で味わい深い。古書を古読せずというが、テーマ自体は今でも通じるような気がする。また、旧暦8月15日の十五夜から約1月後の十三夜も月見の風習があるのを知った。晩秋から冬へ向かう季節の月。そう思うと作品がさらに浮かび上がる。蛇足ながら、最後の別れのシーンは「シュルブールの雨傘」を思い出した。

樋口一葉は貧困であり、結核のため若くして亡くなったのが残念であるが、私のようなものが長生きして、冷房のかかる部屋で、しかも370円でこんな素晴らしい作品を読んでいることに対して、本当に本当に樋口一葉に対して申し訳ない気持ちになる。

★★★★★

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第31夜「浮雲 二葉亭四迷」

久しぶりに面白い本に出合えた。坪内逍遥からの流れで、小説真髄を体現したとされる「浮雲 二葉亭四迷」を読んだ。この作品はいろんな意味で良い方に裏切られる。学生時代に日本文学史に必ず出てくるものだが、多くの学生は「当世書生気質」や「浮雲」は読まないで、夏目漱石や森鴎外等が必読書に挙げられ読んでいるのだろう。もっと早く読んでおけばよかったかもしれないが、今だからこそ楽しめたことは大きい。東京に出てきて三十余年。舞台として出てくる場所にも住んだこともあり、身近に感じた。ともかく斜め上に笑いたいそんな作品で。激しくお勧めする。

最後のシーンでお勢が、編み物をしているが、お鍋が「ほんとに内海・・・」と言ったのは、希望的観測では、内海さんの為に編んでいると思いたかったが、編み物を奥座敷へ投げ入れているので、お勢の気まぐれの一つだろう。「だめだこりゃー」という気持ちである。

★★★★★

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第30夜「当世書生気質 坪内逍遥」

日本近代短篇小説選明治篇1の「細君 坪内逍遥」を読んで、せっかくなら「小説真髄」と「当世書生気質」を読もうと思って、青山ブックセンターへ。岩波文庫から出ているらしいけど、在庫はなかった。仕方ないのでamazonで注文した。

「小説真髄」は始めの方で断念。「当世書生気質」は面白く明治の時代感が伝わって良かった。自分の学生、塾生時代のことや今の学生に思いを巡らせた。また、野口英世の伝記に出てくる野口英世に改名した当時はやっていた読み物が、本書であることにもびっくりした。野々口精作は、そんなに学業怠り、放蕩していたようには思われず??であったが、ネットで調べたら、坪内逍遥が野口英世に出されている文章があって、やっぱり伝記のミスリードのようなものだと知った。このあたりが知れて嬉しかった。

いろんな意味で久しぶりに読んで非常に良かった作品である。岩波には感謝 ★★★★★

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第29夜「一房の葡萄 有島武郎」

日本近代短編小説選の「小さき者へ 有島武郎」を読んでいたら、ふと「一房の葡萄」が懐かしく思え、改めて読みたいと思った。

「一房の葡萄」「溺れかけた兄妹」「碁石を飲んだ八っちゃん」「僕の防止のお話」「火事とポチ」「小さき者へ」角川春樹文庫で280円はお得であった。

私生活を知ってくるとなんだかなぁと思える。これはこれ、それはそれと割り切らないと作品自身が色眼鏡で見ることになる。

 

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第29夜「山椒魚 井伏鱒二」

日本近代短編小説選で、「鯉 井伏鱒二」を読んだら、「山椒魚」が読みたくなった。山椒魚がデビュー作とは知らなかった。

「朽助のいる谷間」「岬の風景」「へんろう宿」「掛け持ち」「シグレ島叙景」「言葉について」「寒山習得」「夜更けと梅の花」「女人来訪」「屋根の上のサワン」「大空の鷲」

一つ一つの作品が味わい深い。繰り返し読んでもいいと思える。

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第28夜「日本近代短篇小説選 昭和篇3」

「小銃 小島信夫」「驟雨 吉行淳之介」「黒い裾 幸田文」「結婚 庄野潤三」「萩のもんかきや 中野重治」「二世の縁 拾遺 円地文子」「群猿図 花田清輝」「帝国軍隊に於ける学習・序 富士正晴」「夏の葬列 山川方夫」「出発は遂に訪れず 島尾敏雄」「闇の中の黒い馬 埴谷雄高」「無妙記 深沢七郎」「蘭陵王 三島由紀夫」

13作品

全6巻で、86人86作品を読んだ。

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第27夜「日本近代短篇小説選 昭和篇2」

「墓地の春 中里恒子」「焼け跡のイエス 石川淳」「夏の花 原民喜」「桜の森の満開の下 坂口安吾」「顔の中の赤い月 野間宏」「蜆 梅崎春生」「虫のいろいろ 尾崎一雄」「もの喰う女 武田泰淳」「胡桃割り 永井龍男」「水仙 林芙美子」「出征 大岡昇平」「小さな礼拝堂 長谷川四郎」「プルートーのわな 安部公房」

全13作品

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第26夜「日本近代短篇小説選 昭和篇1」

「施療室にて 平林たい子」「鯉 井伏鱒二」「キャラメル工場から 佐多稲子」「死の素描 堀辰雄」「機械 横光利一」「闇の絵巻 梶井基次郎」「ゼーロン 牧野信一」「母たち 小林多喜二」「生物祭 伊藤整」「あにいもうと 室生犀星」「いのちの初夜」「築地河岸 宮本百合子」「虚実 高見順」「家霊 岡本かの子」「待つ 太宰治」「文字禍 中島敦」

全16作品

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