家にあった本を読んだ。ずいぶん前に読んだのだろう。読みだしておぼろに思いだした程度であったので、初めて読んだに等しい。精神を病んだ著名人と天真爛漫で風変わりな精神科医との面白いからみで進行していく。「空中ブランコ」「ハリネズミ」「義父のヅラ」「ホットコーナー」「女流作家」の5作品が収目られているがいずれも同程度に面白い。そして、皆精神状態が改善していくという読書にとっても精神衛生上よい作品となっているといえる。作家の奥田英朗氏のほかの作品も読んでみたいと感じた。
★★★★
菊池寛の「蘭学事始」から杉田玄白の「蘭学事始」を読むことにした。いろいろ発見があった。杉田玄白氏の初めての刊行本が「解体新書」であり「蘭学事始」は最晩年の83才での稿であること。明治2年に刊行されるに至っては福沢諭吉の力添えがあったということ。「ターヘルアナトミア」の翻訳から始まった蘭学の流れを50年たった後で振り返り歴史的事実を後年に残したいというものであったこと。
すでに学校教育で習っていたことは、恐らくこの本からのエピソードであろう。原文や解説が載っており現代訳のところは80ページ程ですぐ読んでしまうが読みごたえはあった。この本では、杉田玄白、前野良沢、中川淳庵の3人が中心で解体新書を訳したようなことを書いてあったが、現在中川淳庵の名は聞かない。世の中そんなものだろう。
この文庫は講談社学術文庫で本体価格1100円もする。価格は高いが、こういう社会的に意義のあるものを残してくれて現代でも読めるようにしていることをありがたく思うとともに日本の学術研究は大したものだと関心もした。
★★★★★
40年以上も前の話。もうほとんど忘れてしまっているのだがフランキー堺が菊池寛の役として出演していた映画を深夜テレビで見たことがある。面白おかしく描かれた作品で僕の中では、読みもしないで作家としての菊池寛の評価はそれほど高いものではなかった。中学の国語の先生が菊池寛の話をされ、彼の功績を黒板に列挙されていて作家というより企業家のイメージが強かったせいもあると思う。ところで、ここ1,2年で「恩を返す話」「忠直卿行状記」と読んで、作家としての偉大さを知った。そしてこの作品は菊池寛の代表作の一つでありタイトルだけ知っていただけに期待して読んだ。テンポよく話が展開し、終わりには思わず涙ぐんでしまう。ああやっぱり菊池寛って偉大だわと思わせる作品。★★★★★
youtubeの本要約チャンネルが勝手に流れていて「ソクラステスの弁明」について語っていた。高校の頃「弁明」は軽く読んでいたが、改めて読みたくなった。
読んでいての感想は、まず、ソクラテスは現代では哲学者扱いだが、実態は宗教家であったのだろうということ。小さいころから神の声が聞こえていたと語っているし、デルフォイの神殿で、一番の知恵者だと言われたという話もそうである。自分を救世主と神の声を聴き宗教の祖となる人は多い。死から逃げずに信念を通して死を受け入れるのも自分の神を信じていたからだろうと思った。
次に1回目の投票で死刑が決まってからの弁明において、お金を支払うと言いだしているということ。個人的には申し訳ないが命乞いの一種にも思え残念に感じた。
再度の投票で死刑が確定した後の演説が思ったより長いこと。現代の裁判で判決が下ったらそれで終わりなのに、死刑が確定した後に語る語る。長すぎだろと思った。
最後に訳者が田中美知太郎先生だったこと。
いろんなことを再認識した次第です。
★★★